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影の花

第18章 イタミイリマス


桃の首根っこを掴み、瑞から引き剥がした。

「うぅ〜……」

桃の口からは不機嫌な子どものような唸り声がこぼれる。

表情も、歳に見合わない幼さがあった。

「ふー。瑞、こいつが桃だ。分かったと思うけど、桃は色々やらかしちまうからって、旦那がこんな部屋を作ったんだよ。勿論閉じ込めっぱなしって訳じゃねえけど……厠とか、風呂以外、食事もここで取ってるんだよ」

そこまで言い、萩は複雑そうな表情を浮かべる。

無邪気そのものの様子の桃と、重厚な作りの牢を見比べ、瑞を見る。

「この部屋の鍵は、旦那と俺と、躑躅しか持ってねえ。桃は自分では出られねえ」

「そうなんですね……」

桃は二人の会話を知ってか知らずか、来客にニコニコしている。

瑞に嬉しそうに笑いかけ、ぴょんと飛び跳ねた。

萩は困った顔で桃の手を繋ぐ。

「悪い、さっきは驚いただろ? 桃も誰彼構わずこんな事する訳じゃねえんだけどさ」

「いえ、大丈夫ですよ。歓迎されるのは嬉しいです」

萩は桃の手を軽く引っ張って視線を合わせる。

「う?」

「おいこら桃。いきなり飛び付くのはダメだろ。瑞が驚いただろ」

桃は叱られているのを理解したのか、悲しそうに眉を下げる。

しゅんとした顔で瑞を見、モジモジと指先を動かす。

「ぁああっ……ん、うう……」

「お、怒ってないですよ、桃さん」

瑞がそう言うと、桃は表情を明るくする。

瑞に顔を寄せると、頬をべろっと舐め上げた。

「わ!」

「お、おいおい! 桃っ!」
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