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影の花

第18章 イタミイリマス


萩と瑞に気がつくと、青年はきろりと横目で睨む。

「桃、お客さんだ。入るぞ」

萩は袂から鍵を取りだし、錠前を開いた。

瑞は少し足を竦ませたものの、萩の後ろに続く。

桃と呼ばれた青年の前に立ち、緊張気味に頭を下げた。

「初めまして、桃さん。瑞と言います。これからよろしくお願」

鋭い目付きと裏腹に、興味深げに瑞を見つめていた桃。

言い切る前に、

「ッわああああぁああ!」

瑞に勢いよく飛びついた。

大柄な彼に飛びつかれてすっ転ぶ瑞に身体を寄せ、すりすりと顔を擦り付ける。

桃の顔は嬉しそうに緩み、まるで大きな犬のような様相だった。

「んッ、んぅ、ふっ、あ、ダメです、ぅう……」

瑞は擽ったさに身体を跳ねさせ、切なげに息を震わせる。

「あッ、あ……! 桃、さ……」

桃の大きな手が腰に回る。

瑞は手足を捩り、顔を火照らせた。

「こ、こらッ!」

呆然としていた萩。

我に返ると、慌てて桃を一喝する。
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