第17章 芽吹き
「怖い怖い怖い怖い……! 陽の光が、人の目が怖いぃ……!」
翌日、約束通り街に繰り出した瑞と夜顔。
影の花から離れてものの数歩で、夜顔は道端にうずくまった。
太陽に怯え、人の視線に頭を抱える。
小刻みに震え始める。
「大丈夫ですか!?」
「全部怖い……早く帰って、布団の中に入りたい……」
余所行きの網傘を両手で握り締めて深く被り、絶望的な言葉を洩らす。
「か、帰りますか?」
瑞の問いかけに夜顔はふるふると首を横に振る。
顔面蒼白で立ち上がった。
「行く……」
「無理はしないでくださいねっ!」
夜顔は足取りほど不安定なものの、迷いなく道を進む。
部屋に引きこもる以前は、陰間として夜の街を歩き、数多の店を訪れてきたのだろう。
夜顔はおもちゃ屋の前で立ち止まった。
「兄弟に、迷惑かけてきたから……今日は、その、罪滅ぼしがしたくて……」
「そうなんですね。まずはこのお店からですか?」
夜顔は頷き、瑞と共に店に入る。
雑多に並んだおもちゃを見ながら、取り留めのない話をして回る。
夜顔は一つ人形を手に取った。
可愛らしい顔立ちをした人形を手に、優しい表情で呟く。
「朝に。朝、お人形さんが好きだから……喜ぶかな」
「良いと思いますよ」
次に種屋に立ち寄り、野菜の種子や苗を買い足す。
「これは昼」
「昼顔さん、きっと喜ぶと思います!」
三軒目、煙草屋にて。
夜顔は、刻み煙草と煙草入れを購入した。
「夕にはこれ……」
「夕顔さん、感涙に咽ぶんじゃないですかね……」
夜顔と瑞の手にいっぱいになったお土産。