第17章 芽吹き
夜更け過ぎ、いつものように瑞の握ったおにぎりを頬張る夜顔。
最初は夕顔が必ずと言っていいほど同席していたが、夜顔たっての希望で、最近は瑞と夜顔の二人きりで過ごしている。
瑞は夜顔の食べる様子を微笑ましそうに眺め、ゆっくりと腰を上げた。
「お茶でも淹れましょうか」
夜顔は、やかんにお湯を張る瑞を見つめる。
瑞はゆったりとした雰囲気でお茶を準備していく。
夜顔はぼそりと口を開いた。
「明日……」
「明日?」
お盆に湯呑みを載せて戻ってきた瑞は夜顔の前に座り、小首を傾げる。
夜顔に茶を勧め、自分も啜りながら夜顔を見つめる。
夜顔は息を吸い込み、必死に話を切り出した。
「明日、そ、外、出てみたいんだけど……いっ、しょに……来……来、て……くれたら……」
「私と、ですか?」
夜顔はこくりと頷く。
前髪で隠れた顔は、酷く緊張しているようだった。
形の良い唇に跡が残るほど噛み締め、両手を握り締める夜顔。
今日も変わらず黒ずくめの格好で、迷い迷い言葉を吐き出す。
瑞はきょとんとした後、微笑んで首を縦に振った。