第3章 愛情は隠し味
「なあなあなあ、なんか今食べれるのねー?おれもう腹減って仕方ねーんだよ」
瑞はその様子に、出来上がったばかりの混ぜご飯を使い、食べやすい大きさのおにぎりを握った。
それを優しく差し出す。
「良ければ、どうぞ」
「おお、ありがとうございます」
「いえ」
受け取るなり大きく頬張り、片手を使って身振りをしながら話し始める。
「それでさ、今さっきの客がすっげー女でさぁ、おれ抜かずに三発も……」
「桔梗、話すか食べるかどっちかにしなよ」
桜が食べながらくっちゃべる桔梗を白い目で見る。
「まあそう固いこと言うなって、おれがめちゃくちゃ頑張った話を聞い」
そこで桔梗は言葉を止め、おにぎりをもう一度頬張る。
もぐもぐと味わい、一つぺろっと平らげたところで瑞に顔を向ける。
「ん……うめえ……これなんすか」
「これはワカメとゴマの混ぜご飯ですね。本当は青菜とゴマにしようと思ったのですが、なかったので。乾物の干しわかめを使わせて頂きました」
「へえ〜……」
「瑞も食べなくていいの? さっきお腹鳴らしてたでしょ」
「いえ、なんだか落ち着いてきました。宜しければですが、後から皆さんと一緒に頂きたいです」
「……瑞可愛い! 桔梗と全然違う!」
「なんだよ! だからおれは肉体労働してきたから腹ペコペコなんだよ〜、ヤると腹減るじゃん」
椿が呆れ果てたように言う。
「桔梗にいは、ほんとスケコマシっていうか、よくそんなこと大声で言えるよねー。恥ずかしくないの?」
「椿おめーは潔癖過ぎ。そんなんで将来立派な陰間に……っつーか、え? 誰!? 今の人誰!?」
そう言ったところで桔梗は瑞から離れるように飛び上がった。
「あ、やっと気づいた」
「驚くの遅いなあ〜」
「瑞も馴染みすぎでしょ」
後ろに飛びずさり、瑞を指さす。