第16章 兄弟元気で留守が良い
「へえ」
それを見下ろす一人の陰間。
睡蓮の瞳と同じ色合の薔薇色の髪を高い位置でひとつに結い上げた彼は、澄んだ水色の瞳をしていた。
睡蓮は顔を歪める。
「に……兄さん!」
蓮華の両目は細く弧を描く。
瑞を見てしなを作り、柔らかな唇を持ち上げて笑みを作った。
「君はとんでもないスケコマシなんだね、まさか僕の弟にまで手を出してるなんて」
「な……なんのことでしょうか」
蓮華は含み笑いをし、瑞の隣にしゃがみこむ。
瑞の耳元に囁いた。
「何も知らないとお思いかい? 君、色んな男娼に手を出してるらしいじゃないか」
即座に否定できない瑞の顎に手を添え、瞳を見据える。
「君は可愛い顔をして……恐ろしい毒牙を持っているんだね……」
ゆっくりと迫ってくる蓮華に瑞は狼狽える。
「ま、待ってください、蓮華さん……この流れはなんだかちょっと不味い、ような……」
一連のやり取りを眺めていた睡蓮は怒りに肩を震わせ、
「僕の目の前でやるなあ!」
「いったあぁああ!」
思いっきり瑞の頬を張った。
半泣きになる瑞の胸ぐらを掴む。