第15章 苦労人
耐え兼ねた梅が瑞の部屋に飛び込む。
瑞は二人目の来訪者にビクッと肩を跳ねさせ、梅が菊に縋る様子を呆然と眺める。
「そういう意味じゃないんです! 全くもって! 違うのです! 梅、貴方は何か勘違いしています!」
「勝ったら梅の心を返して貰おウ! 梅は今瑞さんにゾッコンだから、菊は寂しイ!」
「ああああああ!」
「は、はあ」
「待てーっ!」
続けざまに障子が開く。
三人の視線の先には、
「梅にい、瑞と腕相撲をしたいなら、まずこのボクを倒してからにしてよね!」
自信満々に細腕を見せる椿が立っていた。
「なん……だト……」
菊は愕然とし、
「望むところダ!」
意気揚々と立ち向かう。
完全に置いていかれた瑞と梅。
二人の腕相撲対決を見守りながら、ぽつりと呟く。
「大変ですね、梅さんも」
「……瑞さんには負けます」
梅はガックリと肩を落とした。