第15章 苦労人
程よく腹の満たされた二人が歩き始めると、瑞の目にどこか見覚えのある顔の男二人組が飛び込んでくる。
「いたか!?」
「いや、いねえ! いったいどこにいるんだ、紫陽花さん!」
「紫陽花兄さん……あの強さ、痺れたぜ。何としても弟子にしてもらう!」
男たちの台詞に、瑞は勢いよく噎せた。
「だっ、大丈夫ですか……!」
「大丈夫っ、です、ちょっとビックリ、して……ッ」
一人の男の視線が瑞に向かう。
「ん?」
訝しげにこちらを見る目に気が付いた瑞は、男から身体を反対に向ける。
顔を隠そうと、そのまま梅を力いっぱい抱き締めた。
「瑞さ、っ……」
急に抱き込められ、瑞の腕の中ではくはくと口を開閉する梅。
顔は茹でダコのように真っ赤に染まっていく。
男は瑞の姿を少し見た後、
「どうした?」
「いや……なんでもない」
仲間から問いかけられると視線を外した。
「早く探すぞ!」
「ああ!」
男たちが去っていくのを見、瑞は胸を撫で下ろす。