• テキストサイズ

影の花

第14章 山嵐のジレンマ


薊は自分の部屋の布団に瑞を放り投げる。

「つッ……!」

「頭下げんのはもう充分だ。それ相応の誠意っつうのを見せてもらおうか」

瑞の上に覆い被さると、襟元に手を差し込んだ。

「あの……」

「んだよ」

「なんでずっと目を押さえてるんですか?」

瑞は真面目な顔で訊ねる。

薊は片手で目を押さえ、もう片手で瑞の胸をまさぐる滑稽な格好を意識させられ固まる。

声を荒らげた。

「ってめぇが俺の前髪切ったからだろうが!」

「いえあのッ、そうじゃなくて、ずっと前髪でも隠してましたし、そもそもの理由は何だろうって」

「物見高い野郎だな、どうでもいいことに興味持ちやがって。おかげでこっちは興醒めだ」

薊は舌打ちし、瑞の身体から片手を離す。

「すみません……」

瑞はしゅんと眦を下げる。

そんな姿に後ろめたい気持ちになったのか、薊は早口に言葉を吐いた。

「そんなに人の顔が気になんなら存分に見せてやろうか」
/ 402ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp