第14章 山嵐のジレンマ
薊は自分の部屋の布団に瑞を放り投げる。
「つッ……!」
「頭下げんのはもう充分だ。それ相応の誠意っつうのを見せてもらおうか」
瑞の上に覆い被さると、襟元に手を差し込んだ。
「あの……」
「んだよ」
「なんでずっと目を押さえてるんですか?」
瑞は真面目な顔で訊ねる。
薊は片手で目を押さえ、もう片手で瑞の胸をまさぐる滑稽な格好を意識させられ固まる。
声を荒らげた。
「ってめぇが俺の前髪切ったからだろうが!」
「いえあのッ、そうじゃなくて、ずっと前髪でも隠してましたし、そもそもの理由は何だろうって」
「物見高い野郎だな、どうでもいいことに興味持ちやがって。おかげでこっちは興醒めだ」
薊は舌打ちし、瑞の身体から片手を離す。
「すみません……」
瑞はしゅんと眦を下げる。
そんな姿に後ろめたい気持ちになったのか、薊は早口に言葉を吐いた。
「そんなに人の顔が気になんなら存分に見せてやろうか」