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影の花

第14章 山嵐のジレンマ


日は変わって、台所に立つ瑞。

細かく野菜を刻み、おみおつけの準備をしているようだ。

そんな瑞の後ろにそろそろと近づく影。

「だーれだっ!」

桜が元気よく飛びつき、瑞の両目を手で覆い隠した。

「うわあっ!」

「きゃあッ!?」

いきなり視界を塞がれ驚いた瑞は、包丁を握った手を後方に振る。

桜は驚いて逃げ、

「……あ?」

運悪く顔を見せた薊の顔スレスレに包丁が掠める。

スパッと言う良い音と共に、断髪された。

片目を隠している前髪が犠牲になった。

床にこぼれ落ちる銀髪。

「ぎゃあああああああああ」

薊の絶叫に桜は目を丸くする。

「薊さんどうし」

「桜こっち見んじゃねえぞ、てめぇ今こっち見たらぶっ殺すからな!」

怒気を含んだ声で脅しつけ、顕になった右目を手で覆う。

片目で瑞を睨みつけた。

瑞は包丁を片手に戦慄く。

「すすすすすみません……ッ!」

「てめぇワザとだな!? ワザとだなぁおい!」

「わわ、わざとじゃないんです! お怪我はありませんでしたかッ!」

「いいから包丁置け!」

瑞が動転しつつも何とか包丁から手を離すと、薊がその手を掴んだ。

「来い。きっちり落とし前付けてもらおうじゃねえか」

瑞はそのまま連行されていく。

「どうしよ〜……!」

桜は涙声を上げた。
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