第14章 山嵐のジレンマ
瑞は耐え兼ねたように笑いを漏らした。
「……ふっ」
「あー! 瑞さんまで笑ったあ!」
「す、すみません!」
「こんなん笑わんやつおらんて!」
二人でお腹を抱えて笑い転げていると、
「随分楽しそうだなぁ」
掠れ気味の声がした。
視線をやると、藍色の紬着物を着た青年がひっそりと笑っていた。
長身痩躯に、梳き流した癖のない銀髪を顎程で切り、左目は前髪で隠している。
右目は海のような明るい水色をしていた。
肌は白く、鋭い目つきと薄い唇はお世辞にも人相が良いとは言えないが、影のある表情と整った鼻梁が妖しい魅力を放つ。
彼を見るや否や、笑いまくっていた竜胆と、不貞腐れていた桔梗は背筋を伸ばした。
「ぅはいッ!」
「は……はは、すいません、うるさかったですね……」
青年は面白そうに瑞たちを見回し、口角を上げて笑う。
「ああ、俺も混ぜてくれや」
場の空気が凍りついた。