第14章 山嵐のジレンマ
「せやせや。いくら桔梗でも陰間遊びて結構金かかんねんけど、たま〜にこういうこともあんねん」
「桔梗でもは余計だっ!」
「せやから桔梗も、えらい豪勢やなあて思いながら、三人で絡んでたんやて。そんで最初に客の男が遊女さんを抱いてな」
瑞は内容の生々しさに恥ずかしそうにしつつも、興味ありげに相槌を打つ。
桔梗は居心地悪そうな表情を浮かべ、貧乏ゆすりをする。
「終わったあとに交代って言われたんやって。桔梗も遊女さんを抱け言うこっちゃな。まあ、そういうのに興奮するやつもおるんちゃう? 知らんけど」
「なるほど……それで、どうしたんですか?」
「桔梗が言われるがまま遊女さん抱いて、終わって、顔上げたら客がおらんかってん」
「えっ!?」
桔梗は蚊の鳴くような声で言う。
「……逃げられた」
「ゆっ、遊女さん抱いてる間に客に逃げられてん、コイツ! ほんで、慌てて客追いかけようとしたら。遊女さんに、待ちな、遊女とタダで遊べると思ってんのかいって詰め寄られて」
竜胆の声が段々笑い混じりになる。
「必死で弁解してんけど、なぜか桔梗がめっちゃくちゃに言われて。桔梗は男に抱かれた金も貰えへんし、男が抱いた遊女さんの代金支払ったんやて。そんでべそかきながら逃げ帰ってきたんや」