第13章 流れ者
瑞は鈴蘭を羽交い締めたまま、助けを求める。
「しゅ、収集が付きませんねこれ……! 誰か! 誰か来てくださいいいっ!」
瑞の悲鳴を聞きつけた牡丹が部屋に飛び込む。
「蘭、落ち着け……!」
蘭を押さえつけた。
「鈴蘭ちゃ〜ん! 喧嘩はだめ〜っ、ぼくとお汁粉でも飲みに行こ、ねっ!」
紫陽花も後ろに続き、懸命に鈴蘭を宥める。
「離せ! あの女と決着付けたる!」
「だめだめだめ!」
「紫陽花、さっさと行くぞ……手が付けられん」
牡丹と紫陽花は二人がかりで鈴蘭を部屋から連れ出した。
再び瑞と二人っきりになった蘭は、肩を落とす。
「我が息子ながら、ほんと呆れるくらいにバカね……」
鈴蘭をさらりと息子と言う蘭。
その声色に抵抗は感じられなかった。
瑞は否定も肯定もせず、真面目な顔で呟いた。
「親子喧嘩ってああいう感じなんですかね。なんだか羨ましいです」
「いや特殊すぎるわよ、こんな親子」