第3章 愛情は隠し味
紫陽花が瑞の手元を覗き込む。
「でも、主菜が消し炭になっちゃったのに大丈夫なの〜?他には食材なんにもないよ〜」
「……消し炭にしたのはアジサイ兄でしょ」
椿も不服そうにしながらも瑞を見上げる。
風呂上がりで清潔な浴衣を着た瑞は桜に身なりを整えられ、なかなかの好青年で、椿は思わず視線を逸らした。
そんなことに気が付かない瑞は紫陽花の問いかけに微笑んで頷く。
「だいたい、何とかなると思います。戸棚を見せて貰ってもよろしいでしょうか?」
「もう何でも使ってください」
紫陽花はぺこりと頭を下げる。
瑞が料理を始めると、桜も台所に入ってくる。
「あ、桜ちゃん」
「桜ねえ!お帰り〜」
椿が嬉しそうに桜に飛びつく。
「椿ちゃん〜、飛びついたら桜ちゃんの振袖汚れちゃうでしょー」
椿は慌てて離れ、再度嬉しそうに笑顔を作った。
「ねえ桜ちゃん〜、この人だーれ? 新しい陰間さん?」
「ううん、違うの。また後で話すね」
桜は椿の頭を撫でながら笑って首を振る。
手際良く料理をする瑞の後ろ姿に見蕩れていた。
「……あの、このような感じでよろしいでしょうか」
暫くして、台所に漂っていた焦げ臭い臭いは美味しそうな匂いに変わり、台所には沢山の料理が並んでいた。
具材には主に乾物を使った、汁物、煮物、混ぜご飯、お漬物。
三人の目が輝く。