第3章 愛情は隠し味
「でもでも〜、元はお野菜さん、だったかも〜……」
「元じゃ意味ないのお! 今はこれ消し炭ッ!」
「ごめんね〜椿ちゃん……! ごめんね〜」
紫陽花はおろおろとして、椿と呼んだ子どもを見下ろす。
椿は頭を抱えた。
「も〜!だから紫陽花にいと料理番なんて嫌だったのにい!」
その様子を見ていた桜が肩をすくめる。
「……あちゃー。こりゃあ今日は夕飯抜きかな」
ふと、黙って眺めていた瑞が台所に足を踏み入れた。
「え、瑞?」
「宜しければ、私が何とかしましょうか?」
いきなり声を掛けられ、椿と紫陽花が飛び上がる。
「わ!」
「びっくりした〜」
その上振り返ると、見知らぬ青年が立っている。
「……だ、だれ? このにいに」
椿は警戒心を顕に紫陽花の背中に隠れるも、
「何とかなるのならお願いしたいです〜」
紫陽花はホイホイと瑞に鍋を手渡した。
「ちょっと紫陽花にい! 誰だかわかんない人に……」
瑞は頷いて受け取り、台所に立つ。
「はい、分かりました。この鍋は焦げが凄いのであとから天日干しにしましょうか。しっかりと太陽に当てて干してから擦れば、焦げ付きが落ちますよ」
「……椿ちゃん〜、そんなの知ってた?」
「し、知ってるもん」