• テキストサイズ

影の花

第13章 流れ者


「鈴蘭に男が取れるよう仕込んでる時は、人生で一番辛かったわ。天罰かと思ったわね」

「鈴蘭さんはその事を知ってるんですか?」

「言えないわよ。嫌でしょ、こんな父親」

二人の間に沈黙が落ちる。

蘭は目を細めた。

「瑞ちゃん、この前アタシに甘えていいって言ってくれたじゃない? 嬉しかったの。だから、話しちゃった。一人で抱えるには重たすぎて、そろそろ限界が来そうだったから」

「話してくれて嬉しいです。蘭さん、ありがとうございます」

「なんで瑞ちゃんがお礼を言うのよ。……アタシ、皆には偉そうに陰間としての誇りとか、仁義を説いてるけどね。息子にはこんな仕事して欲しくなかったなんて思うのね。きらびやかな面も確かにあるけど、汚い部分の方がよっぽど多いわ」

そこまで言い、蘭は目を伏せた。

「息子なんて言う資格もないけどね」

「そんな……」

「ごめんね、こんな話しちゃって」

瑞は両腕を伸ばし、蘭をぎゅっと抱き締めた。

「瑞ちゃんっ……!?」

「……私は、今の蘭さんのことが好きですよ」

蘭は目を見開き固まっていたものの、ゆっくりと瑞に身を任せた。
/ 402ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp