第13章 流れ者
「鈴蘭に男が取れるよう仕込んでる時は、人生で一番辛かったわ。天罰かと思ったわね」
「鈴蘭さんはその事を知ってるんですか?」
「言えないわよ。嫌でしょ、こんな父親」
二人の間に沈黙が落ちる。
蘭は目を細めた。
「瑞ちゃん、この前アタシに甘えていいって言ってくれたじゃない? 嬉しかったの。だから、話しちゃった。一人で抱えるには重たすぎて、そろそろ限界が来そうだったから」
「話してくれて嬉しいです。蘭さん、ありがとうございます」
「なんで瑞ちゃんがお礼を言うのよ。……アタシ、皆には偉そうに陰間としての誇りとか、仁義を説いてるけどね。息子にはこんな仕事して欲しくなかったなんて思うのね。きらびやかな面も確かにあるけど、汚い部分の方がよっぽど多いわ」
そこまで言い、蘭は目を伏せた。
「息子なんて言う資格もないけどね」
「そんな……」
「ごめんね、こんな話しちゃって」
瑞は両腕を伸ばし、蘭をぎゅっと抱き締めた。
「瑞ちゃんっ……!?」
「……私は、今の蘭さんのことが好きですよ」
蘭は目を見開き固まっていたものの、ゆっくりと瑞に身を任せた。