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影の花

第13章 流れ者


「それで、鈴蘭の事なんだけどね……随分と迷惑してるでしょ、ごめんなさいね。あの子、元から思い込みが強い子なんだけど。思春期って言うのかしら、最近特に酷くて」

蘭は溜息をつき、こめかみに手をやる。

「いえいえ……でも、どうして蘭さんが謝るんですか」

瑞は紫陽花の言っていた、蘭は鈴蘭に甘いという言葉を思い出しながら、不思議そうに訊ねた。

蘭は難しい顔になり、瑞をじっと見つめる。

腹を括ったように、口を開いた。

「……これ絶対内緒よ?」

「はい」

「鈴蘭ってアタシの息子なのよ」

瑞は驚愕した。

「ええええええええ!?」

「ちょっとお! 瑞ちゃん声が大きいわよ……!」

「すみません……っ!」

蘭は瑞に声を潜めるように念押しし、改めて話し始める。

「アタシが十三か十四くらいの子かしら」

「えっ……鈴蘭さんの年が……え? 蘭さんって今何歳なんですか?」

瑞が思わず口を挟むと、蘭は目端を釣り上げて睨んだ。

「野暮なこと訊くんじゃないわよ」

「す、すみません」

「でもね、普通堕ろすのよ、陰間の子なんて。アタシ達との一夜なんてちょっとした火遊び、孕んだって客の自己責任。遊女だって、客の子を孕んだら堕ろすし、客に文句だって言わないでしょ? そういうもんなの」

瑞は牡丹の話を思い出しながら、蘭の話を聞く。

「なのにね……あの女は、アタシに産まれたての鈴蘭を見せに来たの。わざわざ影の花まで来て。アタシに責任取れなんか言わなかったけどね。顔だけ見てくださいなんて言っちゃって」

蘭と鈴蘭を頭の中で重ね合わせながら、小さく首を縦に振る。
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