第13章 流れ者
そんな状況が何日も続き、瑞は疲れた顔でため息をついた。
「ふう……別に、やましいことはしていないつもりですが。見張られるというのは落ち着かないものですね」
ぽつりと吐き出した後、陰間たちの顔が頭によぎる。
自分も彼らに対し、妙な気を起こしかけた場面がいくつもある。
夕顔に至っては、既に一線を超えてしまっている。
「そ、それとも全く心当たりがない訳ではないから、落ち着かないのでしょうか……」
ブツブツと自問していると、肩に手を置かれた。
「わあッ!」
「あらやだごめんなさい、驚かせちゃったかしら」
飛び上がる瑞の目に、驚いた顔の蘭が映った。
「ああいえ、すみませんこちらこそ。少し考え事をしていて」
苦笑する瑞に、蘭は申し訳なそうに眉を下げる。
「瑞ちゃん、だいぶ疲れてるみたいねえ……鈴蘭のことでしょ?」
「えっ! そ、そそんなことは……!」
「ほんと、嘘が下手ねえ。いいわよ、場所を変えて少し話しましょ」
蘭と瑞は適当な一室に入り、二人きりで腰を据えた。