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影の花

第13章 流れ者


「え……」

鈴蘭はかああと顔を赤らめ、瑞の手を振り払う。

「な……何すんねん、アホ! 気軽に髪いらったりしてえ……!」

「すみません、つい……なんだか可愛らしくて。私も若い時分にはこのような感じだったのかと思うと、微笑ましいというか」

紫陽花は瑞をじっと見つめ、ぴょんぴょんと跳ねて甘える。

「いいなあいいなあ、瑞ちゃんぼくも撫でて〜」

「そんな恐れ多い……ですが、それでは」

瑞が頭を撫でてやると、紫陽花は嬉しそうに表情を緩める。

鈴蘭は瑞をきっと睨みつけた。

「わかった! あんた、虫も殺さへんような顔して、みんなに取り入って、適当な子に目星付けてジゴロになる気やな!」

「じ、ジゴロ?」

「うちのこと可愛いって言うた思たらもう紫陽花に手ぇ出して……」

「わー」

紫陽花の頭を撫でていた瑞の手を掴んで剥がすと、

「うちは騙されへんで!」

大きな声で断言し、力強く障子を閉めた。

呆然と立ちすくむ瑞。

「ね〜。面白いでしょ、鈴蘭ちゃん」

「そう、ですね……」

紫陽花の問いかけに、力無く頷いた。
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