第13章 流れ者
「あんた誰や?」
「瑞です、下働きをしています。よろしくお願いします」
鈴蘭はちらりと瑞の顔を横目で見、気怠げに頷く。
瑞は鈴蘭の包帯に目をやり、遠慮がちに訊ねる。
「あの……手は大丈夫ですか? 怪我をされたんですか? 無理に言う必要はありませんが……」
鈴蘭は瑞の質問に目に光を宿らせた。
包帯を撫でながら、もったいぶって言う。
「いや、そないな訳と違うけど……なんて言うんかいな……封印っちゅうか、秘めた力っちゅうか……な?」
「は、はあ」
目を点にする瑞の反応を好意的に捉えたのか、鈴蘭は口角を上げた。
得意げに浴衣を広げ、首を傾げると長い髪が揺れる。
「ほら、うちって他の子と少しちゃう感じがしいひん? あんたも見てそう思わへんかった?」
「そうですね……髪飾り、とか……」
そんなやり取りを暖かい目で見ていた紫陽花が、ぽんと瑞の肩を叩いた。
「ね〜、鈴蘭ちゃん面白いでしょー」
「おもろいとかそんなんとはちゃうけどお、うち変わってるさかい」
瑞はニコッと笑い、
「鈴蘭さんは可愛いですね」
鈴蘭の頭をよしよしと頭を撫でた。