第13章 流れ者
瑞は思わずドキッとし、赤面しつつ頷く。
「は、はい、紫陽花さんがそう言うなら……」
「わ〜、瑞ちゃん優しい〜っ」
紫陽花は瑞に腕を絡めて抱きつく。
「飴も紫陽花さんが食べていいですよ」
「それじゃあ一緒に食べる〜?」
「あ、飴をですか?」
「ちょっとお〜? 何やってんのかしら、あんた! 紫陽花ッ!」
紫陽花の変貌ぶりが闇に隠される現場の目撃者。
たまたま買い物に出ていた蘭がその光景を目撃しており、肩を震わせていた。
紫陽花は顔色を変え、瑞の背中に隠れる。
「あわわわ……!」
「あんたぁ、街中であんなことして陰間としての自覚あるのかしら? アタシ達は影の花の看板背負ってんのよ」
ズンズンと近づいてくる蘭。
紫陽花は瑞の背からこそっと顔を出すと、
「あ! 鈴蘭ちゃんがいるよお〜っ!」
蘭の遥か後方を指さし大声で叫んだ。
「えッ!?」
蘭が振り返ると同時に、紫陽花は瑞の手を取り走り出す。
「逃げよお!」
「私は別に逃げる必要はな」
紫陽花は走りながら、ふふっと笑を零した。
「上手くやったでしょ〜。蘭ちゃん、鈴蘭ちゃんには優しいの」
「鈴蘭さん?」
「まだ会ったことない? じゃあ、帰ってから会ってみよっか! 面白い子だよー」