第13章 流れ者
地面に倒れ込む男に、もう一人の男が顔色を変える。
介抱しながら紫陽花を睨んだ。
「だっ大丈夫か!? おいお前ッ、何しやがる!」
「さっさと失せろ、この野郎!」
「ッぐぉ……!」
もう一人の男には強烈な膝蹴りをお見舞いし、紫陽花は腕を組む。
二人を見下ろした。
「まだやんのか?」
「すみませんでしたーッ!」
男たちは這う這うの体で逃げ出す。
紫陽花はそんな光景に、けっと肩を揺らして笑う。
「一昨日来やがれってんだよ、馬鹿野郎が」
瑞は呆然としていたものの、感心したように口を開いた。
「紫陽花さん、お強いんですね……」
紫陽花はハッとした顔になり、あわあわと手を振る。
「えっ、あ〜、ついつい夢中で! プチッときちゃったのー」
「いえいえ、かっこよかったですよ。ありがとうございました。私も紫陽花さんを見習わなければなりませんね」
「うう〜、恥ずかしいよお。瑞ちゃん、飴ちゃんあげるからみんなに内緒にしててくれる〜……?」
紫陽花は瑞に顔を寄せると、潤んだ上目遣いで頼み込んだ。
先程とは打って変わって、別人にも思える甘い声。
ふわふわと跳ねた癖毛と首筋から漂う甘ったるい匂いが鼻腔をくすぐる。