• テキストサイズ

影の花

第13章 流れ者


「飴ちゃん買ってたの〜。見て〜、鶴さんなの。飴細工屋さんって凄いねえ」

男たちは紫陽花の顔を見、尚更嬉しそうにする。

「友達?」

「この子も可愛いじゃーん」

紫陽花はそこでようやく男たちに気がついたようで、こてんと小首を傾げた。

「……瑞ちゃんの知り合いさん?」

「違います……早く、帰りたいのですが……」

項垂れる瑞を見て、紫陽花は男の袖を引っ張る。

「ね〜お兄さん達、瑞ちゃん嫌がってるよ〜」

「じゃあ紫陽花ちゃんも入れて四人で遊ぼっか!」

「ぼくも遊ばないよお、帰る〜」

「二対二でちょうどいいし! さー行こいこ!」

男二人は上機嫌に言い、瑞と紫陽花の背中を強引に押した。

紫陽花は笑顔のまま、

「……瑞ちゃん、ちょっとこれ持ってて〜」

瑞に飴を手渡し、男二人の前に立ちはだかった。

「ん?」

にこにこと弧を描いている糸目をかっと見開き、

「いいからさっさとその汚ぇ手瑞ちゃんから離せっつってんだよ、ドタマカチ割るぞ!」

普段から想像出来ないほど低い声で喝破した。

男は紫陽花の声に仰天する。

「てめえ男ッ……」

紫陽花は勢いよく上半身を反らすと、相手の額に思いっ切り頭突きを叩き込んだ。
/ 402ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp