第13章 流れ者
「飴ちゃん買ってたの〜。見て〜、鶴さんなの。飴細工屋さんって凄いねえ」
男たちは紫陽花の顔を見、尚更嬉しそうにする。
「友達?」
「この子も可愛いじゃーん」
紫陽花はそこでようやく男たちに気がついたようで、こてんと小首を傾げた。
「……瑞ちゃんの知り合いさん?」
「違います……早く、帰りたいのですが……」
項垂れる瑞を見て、紫陽花は男の袖を引っ張る。
「ね〜お兄さん達、瑞ちゃん嫌がってるよ〜」
「じゃあ紫陽花ちゃんも入れて四人で遊ぼっか!」
「ぼくも遊ばないよお、帰る〜」
「二対二でちょうどいいし! さー行こいこ!」
男二人は上機嫌に言い、瑞と紫陽花の背中を強引に押した。
紫陽花は笑顔のまま、
「……瑞ちゃん、ちょっとこれ持ってて〜」
瑞に飴を手渡し、男二人の前に立ちはだかった。
「ん?」
にこにこと弧を描いている糸目をかっと見開き、
「いいからさっさとその汚ぇ手瑞ちゃんから離せっつってんだよ、ドタマカチ割るぞ!」
普段から想像出来ないほど低い声で喝破した。
男は紫陽花の声に仰天する。
「てめえ男ッ……」
紫陽花は勢いよく上半身を反らすと、相手の額に思いっ切り頭突きを叩き込んだ。