第13章 流れ者
反射的に影の花から飛び出した瑞は、ある程度走った所で足を止める。
息を切らしていると、
「また飛び出してしまいました……! 咄嗟に逃げる癖を治さないと、ですね……」
ぽんと背中を叩かれた。
振り向くと、見慣れぬ顔の若い男が二人立っている。
瑞がぽかんと見つめていると、親しげに肩を抱かれた。
「えっ」
「ねえねえ、そんな急いでどうしたの〜?」
「可愛いじゃん、一人?」
瑞は予期しない声掛けに慌てふためく。
目を白黒させている瑞に、もう一人の男はニンマリと笑う。
「そんなビビんなくても大丈夫。今暇? 一緒に遊ぼうよ」
「でも……! 私はお」
「さー行こ」
瑞は男に両側を挟まれたまま、為す術なく足を踏み出した。
「瑞ちゃ〜ん!」
その時、間延びした柔らかい声が瑞に投げ掛けられる。
三人が目をやると、手に細工飴を持った紫陽花が大きく手を振っていた。
細目をにっこりとさせ、眩しいほどの笑顔でこちらに歩いてくる。
瑞はギョッとして声を潜めるも、
「あ、紫陽花さん……! 今はこっちに来ちゃ」
紫陽花は楽しげに近寄り、瑞に向かって精巧に作られた鶴の形の細工飴を差し出す。