第13章 流れ者
瑞は蒲公英の部屋を後にし、足早に廊下を歩く。
自分の部屋の前に辿り着くと、苦笑いした。
「まさかまたこのような格好をするとは思いませんでしたが……蒲公英さんのご家族のお話も聞けたし、良かったかもしれませんね」
ふうと一息つき、安心したようにかつらを外した。
「おいコラ瑞……」
ドスの効いた声がし、瑞は恐る恐る背後を振り返る。
「ゆ、夕顔さんっ!?」
夕顔は瑞の格好に目を通し、引き攣った笑いを浮かべる。
そのまま、ゆっくりと距離を詰め、瑞に迫る。
「あんな事があったのに性懲りも無くまたそんな格好しやがって。オレをおちょくってんのか?」
「ちがちが、違うんですよ、これには訳があって……」
瑞は、しどろもどろになりながら釈明しようとするも、壁際に追い詰められた。
「ひっ」
「犯すぞてめぇ」
瑞は声にならない悲鳴をあげ、その場から逃げ出した。
夕顔は舌打ちし、廊下にしゃがみ込む。
両手で頭を抱えた。
「……クソ、アイツやっぱ可愛いなあちくしょ〜……!」