第13章 流れ者
「あろう事か、こんなに俗な感情を嫌悪していた自分が、主様に邪な思いを抱いたのです! 言語道断です! それなのに、それなのに蒲公英は……ちょっと厭らしい妄想までしてしまいました〜ッ!」
「い、厭らしい?」
「はい……」
蒲公英はこくりと頷き、回想に入る。
『知りませんでしたよ主様。主様にまさかこのような趣味があったとは』
『ああ……蒲公英さんっ、見ないでください』
『どうしてですか、こんなに綺麗なのに。ほら、主様、その美しい顔を上げてください。蒲公英にもっとよく見せてくださいませ』
『あっ……』
「といった感じです」
語られた内容に、瑞は眉を顰める。
「私が攻められる立場なんですね……」
「蒲公英はずっと悶々として、何も手につかないのです! しかしこのような体たらく、恥ずべきこと。思いを断ち切るべく鍛錬に打ち込んでいたのですが」
蒲公英はそこまで言い、瑞の顔を見つめる。
「主様は、蒲公英の持つ思いを醜く思わないと言ってくださいましたね」
「……えっ? それとこれとは全く違」
「本題に戻ります。蒲公英の身の上など前フリに過ぎません」
「なんてこと言うんですか!」
蒲公英は身を前に乗り出した。
「お願いがあるのです、主様」
「もう先が読めてるんですが……!」