第13章 流れ者
早朝、しんと冷えた寒空の下。
「……ふんっ! ふんっ!」
蒲公英は袴姿で刀の素振りをしていた。
上半身は裸の勇ましい格好で、刀を大きく振りかぶっては、力強く前に振り下ろす。
素振りをする度に真っ直ぐな黒髪が揺れ、額には汗が滲む。
キリッとした眉が印象的な目元で真っ直ぐ正面を見据え、黙々と打ち込む姿は幼いながら中々の物だった。
そこへ通りがかった瑞が蒲公英に微笑みかける。
「おはようございます、蒲公英さん。朝から精が出ますね」
「主様! おはようございます」
蒲公英は手を休め、ぱっと表情を輝かせる。
「蒲公英さんはいつも素振りをされているんですか?」
「はい、鍛錬することはどのような立場に置いても無駄にはなりませんから! 蒲公英は今はまだ未熟ですが、いつか主様に相応しい男となり、立派にお守りするのです」
「ふふ、それは嬉しいですね。楽しみにしています」
「はい!」
蒲公英は満面の笑みを浮かべ、大きく頷いた。
柔らかそうな頬を紅く染めながら、瑞を見上げる。
「所で主様、実は蒲公英、主様にご相談がありまして」
「なんですか?」
優しく耳を傾ける瑞の前に跪くと、持っていた刀を差し出す。
真剣な面持ちで瑞を見据えた。