第5章 前夜祭
大輝side
『今日の予定、楽しかった?』
昨日、予定があるから帰るって、言ってたよね…?
なんとかしてメッセを途切れさせないことに必死。
いや、あんまり押しすぎても引かれちゃうのは分かってるから頻度は考えてるけど、昨日会った熱がまだ冷めきってなかったみたい。
なかなか既読がつかなくて不安になって、いや、送るのが早すぎただけかも…いっそのこと返信こないで欲しい…!
そうすれば俺も諦められるはずだし…
♪
「ひぃ!」
陽気な通知音。
慌てて伏せていたスマホを見た。
『もうすぐ冬休みだけど、いつ帰ってくるん?』
一気に肩の力が抜ける。栗原だ。
もうすぐ、ああ、もうそんな時期か。
…来週はクリスマス。
なんか月末バイトの時給高いなって思ってたら、そっか、年末なのか。
すっかり忘れていた。
時給が高い時は大体バイト入れてる。
案の定俺のシフトは31日まできっちり埋まっていた。
来月分のシフトの提出今週中だったけか。
年始に帰ろ。
「31までバイト、早くて1日以降…と」
すぐに既読がついた。珍しい。
『おー。3日飲まん?』
『いいよ。差し?』
『いんやー。いつもの』
一瞬グルで話せよって思ったけど、あいつらは地元離れてないし、よくあってるのかも…
なんか俺だけのけものみたいな感じして少し悲しくなった。
まぁ、仕方ないんだけど。俺はなんとしても親元を離れたかったからわざわざ地方の大学に通うことにした。
『おっけ』
そう返信してスマホを伏せる。
はーぁ、年末か、クリスマス…つきちゃん、予定、やっぱあるのかな。
♪
また通知音。
栗原からスタンプでも返ってきたかと思って、でも癖だったからなんとなくスマホを持ち上げた。
「うわぁぁ」
…っぷ。思わず自分に吹き出した。
つきちゃんからの返信ってなんでこんなに嬉しいんだろう。