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ねぇ

第3章 逢坂くるみ(オウサカ クルミ)


ひっそりと佇むカフェ・デア。
落ち着いた雰囲気の隠れ家的なオシャレなカフェ。
休日はいつもそこそこのひとがいて、今日はベレー帽の寡黙そうなお爺さんはコーヒー片手に本を読んでいて、近くのお嬢様学校の制服の女の子たちがお喋りしながらお茶会をしている。かなり様になる絵面だ。

「いらっしゃいませ」

見るからに優しそうで、まるでメイド長をやっていそうな雰囲気の上品なおばあさまがいつもと変わらず出迎えてくれる。

「お好きな席にどぉぞぉ」

そうにっこりと微笑む様はまさに宮廷アニメのワンシーン。

「どこ座ろっか!」

声量は小さめ、つきに話しかける。

「あそこー」

といっていつもの場所へと。
お嬢様たちとお爺さんが座っている窓側の庭園が見えるのと反対側、ちょっと暗め、トイレに近い席。こちら側はガラス張りではなくて、重厚感のある木の壁がいい味を出している。逆にこの感じが好きなのと、どうしても窓側は人気でいつも人がいるからこっち側に来るのだ。
今回は二人っきりで本当に嬉しい。

「ご注文がお決まりになりましたら、お呼びくださいませ」

おばあさまがおしぼりとメニュー表を持ってきて、微笑んだ。本当にここは完璧だ。

「あ!もうご注文いいですか?」
「はいもちろん。今回もいちごパンケーキとチョコパンケーキ、メープルティ二つですか?お嬢様方」
「えへへ、はい!それでお願いします!」
「おばあさま、いつもありがとうございます」

つきはいつも礼儀正しい。
おばあさまはにっこりと笑って颯爽と消えていった。
本当にプロ。そしてこの場にいるつきが一番様になってる。

つきがおしぼりで手を拭くのにつられるように私も手を拭いた。
雰囲気に呑まれそうになる。
デートなんて、いつぶりだろう。ドキドキしてきた。
ああ、そうだ。これだけは確認しておかなければならない。

「ねぇねぇ、つき」
「んー?」
「彼氏、できた?」

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