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ねぇ

第5章 前夜祭


彼女は少し考えているように遠くを見つめる。
しばらくして俺の方をチラッとみてから。

「ありがと」

とニコッと笑った。
そのとろけるような笑顔にどきっとしてしまう。

「じゃあ、誕プレ探しいきたい。付き合ってくれる?」

俺はてっきり食事して別れると思っていたからまだ一緒にいられることが嬉しかった。でも、俺へのクリスマスプレゼントでもなく、誰かの誕生日プレゼントだ。少し複雑なのは顔に出さずに頷く。
彼女はまた顔をぱっと明るくした。

ずるいなぁ。俺はこんなにもデート気分なのに。
イルミネーションの数億倍明るい彼女の後ろをついていく。

オシャレなアクセサリー屋さんだ。
でも、うん。アクセサリーってことは、男へのプレゼントじゃないはず…俺は言い聞かせる。彼氏を作らない主義の彼女だから、他の誰か特定の男が好きかもしれない可能性はずっと否定していたが…どうなんだろう。俺にはわからない。

「…あ、これとかどうかな。大輝くん。こういうの貰って嬉しい?」

なぜ、俺に聞くんだろう。だんだん不安になってくる。女性に贈りたいものなら俺じゃなくて女友達に聞いたほうが的確じゃなかろうか?
俺はあんまりアクセサリーをつけないからわからないけれど、彼女から…つきちゃんから貰ったらうれしいし柄にもなく身につけるかもしれない。

「俺はアクセサリー詳しくないからなー」

動揺が出ないようとぼけた調子でそう言った。

「あー。でも。それ綺麗だし俺、貰ったらめっちゃ嬉しいよ!」

銀色のシンプルなネックレス。キラキラ光って、そういえばこういうの身に付けてる友達もいるなって思う。

「そか…じゃあ、これにしよかな。あ、あと…」

彼女はスタスタと歩いてコーナーを移動した。
ネクタイのコーナーだった。ここの店ではネクタイも売っているのか。

「この柄、大輝くんぽい」

そう言って差し出したのはカラフルなアジアン風の装飾が施されたネクタイだった。

「え、ちょおいい…」

スーツの時こそ個性を出したいってやつで式典の時とかはあえて派手なネクタイをチョイスする。まわりからはダッセーと笑われるしそれはそれでいいと思っていたのだが、彼女だけは似合ってるねと言ってくれたことを思い出した。

「じゃ、これ、大輝くんのクリスマスプレゼント」
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