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【OP】さよなら、My Dear

第7章 おまけ


『おあーッッ寒い!!!』
雪が降っている。甲板に出たマルーは将校コートで身体をくるみながら近くの島を眺めた。
船内にあった遠眼鏡を持ち出して覗き込むと、古びた住宅街が目に入る。
海賊に占拠された廃墟島か。補給で立ち寄った別の島の住民から聞いた通りだ。
『よし……あれがミニオン島だな』
遠眼鏡を畳みながら操舵室に入り、上陸するために島へ近付いた。
見ると、崖に生えた木にロープがぶら下がっている。その下には小さな小舟が近くの岩に括り付けられていた。
『(ここら辺シケてんのに、よくもまあこんな貧相な船で来れたな)』
誰だか知らんが命知らずだ。
呆れと感心を含んだ笑みを浮かべつつ、マルーは上陸の準備を始めた。
『(そうだ。島に着いたってロシナンテに連絡しとこう)』
船に置かれた電伝虫からロシナンテの番号に掛けると、下の小舟から「プルプルプル……」と聴こえてきた。
『……なるほど』
受話器を置きながら呟く。既に上陸しているみたいだ。
ロシナンテが掛けたであろうロープを使ってマルーが崖を登り終えると、一番高い場所にある屋敷から煙が上がっているのが見えた。
『…………?』
さっきまでは特に何もなかったはずだ。結構な惨事みたいだが爆発音などは聞こえなかった。
ボヤか何かだろうか?
『(……そんなことよりロシナンテを探そう)』
悴んだ両手に息を吐いて、暖めながら歩いていく。
雪が積もっていて歩きにくい。吹雪で視界が悪い。風が冷たい。
見回しながら進んでいると、遠くに誰かがいるのが見えた。
『ロシナンテ……?』
足を早めながら人影に近付いていく。向こうもこちらに向かって歩いているみたいだ。
あっという間に距離が縮まったが、相手はロシナンテではなくボロ布を纏った子供だった。
海賊の拠点だから……海賊の子か?
敵意はなさそうだ。こちらの顔を窺いながらオドオドしている。
『……やあ、何か用か?』
しゃがみこんで聞くと、子供は何かを手渡してきた。
黒い小さな筒に錠が嵌めてある。筒には見慣れたカモメのマークが描かれていた。
『海軍の密書……! 誰かに頼まれたのか?』
こんな小さい子がこんなものを持っているなんて。驚いて顔を向けると、子供がマルーの腕にしがみついてきた。
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