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【OP】さよなら、My Dear

第7章 おまけ


何度も危機を乗り越え3週間を共に過ごした戦友のような船だ。
「コラさん、マルー! この船大丈夫なのか? 機関部から煙出てるぞ!」
船内に居させていたローが異常事態を知らせに来る。危険な航海で船の内部に限界が来ていたらしい。
『ここに来るまでに砲撃とか海王類とか異常気象とか色々あってなー……技師じゃないからメンテナンスも詳しく知らないし……。まあ、アレだ。一番近いスワロー島でこの船は乗り捨てる』
さらば戦友。3週間ありがとう。
マルーは悠々と船を進め、目的地を目指す。どうせ軍艦なんて目立って足が着きやすくなるだけだから捨てるに限るな。
『もう海軍には戻れないし……なっちまうか、海賊』
海軍支部の基地で軍艦を盗み、1人きりで航海をした日のことを思い返す。
今までやってきた悪いこと全てが小さな悪戯に思えてしまう程に罪深く感じた。追いかけてくる他の軍艦、鳴り止まない船内の電伝虫、威嚇の砲撃……。逃げるように北の海へ向かったあの瞬間感じた痛いくらいの胸のドキドキを今でも思い出せる。
その高鳴りが緊張と罪悪感からではないことはその時点で気付いていた。
後戻りできない状況にも拘わらず、何もかもから解放されたような新鮮な高揚感を自覚せずには居られなかった。
その要因が何なのかはっきりとはしないけれど、マルーは海兵を辞めたことにもう何の未練も残していない。
「海賊か……いいぜ。丁度ローとも目的を果たした後は2人で世界を旅しようって約束したばっかだし、このまま3人で好き勝手やるのも悪くねェ」
ドフラミンゴも海軍も政府も敵に回したロシナンテとローも、もう安住の地には期待していないらしい。
俄然楽しくなってきたマルーは嬉しげに操縦桿を握り締めながら、高らかに声を上げた。
『堕ちた海軍将校ヘキサポッド・マルー、ドンキホーテ・ロシナンテ! そして……50億の実の男トラファルガー・ロー! スワロー島へ出発!! 旗揚げは今やるとクソみたいな思い出になってしまうから、今度また新しい船が手に入ってから改めてやるとしよう』
海賊と海軍の船に遭遇しないよう大回りしてスワロー島を目指す。
新たな人生の予感に、軍艦を盗んだときのような血湧き肉踊る不思議な興奮を覚えながらマルーは果てしなく広がる水平線を恍惚とした眼差しで見据えた。









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