第7章 おまけ
移動したことに一瞬で気付いたようだ。おそらく店内の活気が雑音として向こうまで聞こえているんだろう。
静かな基地内より雑然とした街中の方がヒソヒソ話に向いているはずだ。昼時なのもあって忙しい店内はまさに打ってつけと言える場所だった。
『で、さっき言ってた話の続きだが……』
何か危ないことをしようとしているらしい。さっき私を巻き込むことを嫌がっていたな、とマルーは思い返す。
『危険なら尚更だぞ。ロシナンテ、私も荷担するから教えろ。万が一、絶体絶命な状況になったときお前の味方である私が駆け付けられた方がいいだろう。トップシークレットが何なのか知らんが、私は海軍よりお前の方が大事だ……私を信じろ』
同輩かつ友人のロシナンテの身に何かあったら私は海軍を嫌いになってしまう。だから嫌だろうが何だろうが介入してやる、という心意気でそう捲し立てた。
〈……わかった、信じるよ〉
少し呆気に取られたような沈黙の後、ロシナンテが了承する。
〈これからおれ達は北の海にあるミニオン島に向かう。ある海賊団が悪魔の実を持ってるらしいから、それを奪いに行くつもりだ〉
『何でまた、お前が悪魔の実を?』
既に能力者になっている奴が追加で悪魔の実を食べると死んでしまうという話はロシナンテも当然知っている。なぜ必要なのだろう。
〈その悪魔の実で、おれの連れの病気を治せる可能性があるんだ。だから確実におれが手に入れる〉
病気が治る能力の実なんてあるんだろうか。少なくともマルーは聞いたことがなかった。
『はぁ……知らんガキ1人救うために海軍と海賊を両方敵に回すのか。お前らしいよ。』
〈政府も敵に回しそうなんだよな……〉
『世界政府もか…………。バカめ、お前のそういうとこ嫌いだ』
溜め息混じりの付け足しにマルーが悪態をついた。
どこまで人が好いんだ? これで子供の病気に関係のない実だったらバカみたいじゃないか。
マルーも溜め息を吐きつつ、仕方ないと諦めて首を振る。
『じゃあ、大体でいいからミニオン島に到着する予定日を教えてくれ』