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【OP】さよなら、My Dear

第7章 おまけ


ロシナンテの困り果てた声が受話器越しに聞こえる。
マルーも医療に詳しいわけではなかったが、何か力になればと思考を巡らせた。
『うーん、出来ることは限られてるな。栄養摂取と身体を温めることが優先か。まあ、そうだ……とりあえずだ、ロシナンテ。なるべく寒くないようにずっと抱き締めてやれ。身体の冷えは本当に良くない。食べ物もなるべく栄養ありそうなのを無理やりにでも胃にぶち込め』
〈わかった。食欲なさそうだがやってみる〉
『…………』
ただでさえ子供は死にやすい。体力も少ないし免疫も弱いし、頑丈じゃない。だからもしその子供が死んでしまっても「守れなかった、死なせてしまった」と自分を責めないでほしい。仕方のないことだから。どうしようもないことだから。
マルーは追加でそう伝えたかったが、その言葉はロシナンテにとって何の慰めにもならないと思い至ったため言わないことにした。
『ロシナンテ……お前いま何処にいる?』
代わりにマルーは最大限ロシナンテに手を貸そうと思った。
〈北の海のルブニールだ。すぐ発つ予定だがな〉
『これからどこに向かう予定だ? 軍艦を手配して迎えに行ってもらおう。海軍が保護すれば今よりはよくなるはずだ』
〈いや……遠慮しとく。お前を頼るわけにはいかない〉
『なんだ、私が頼りないとでも言いたいのか?』
ムッとしてそう返すと、ロシナンテは声を潜めた。
「違うんだ。これから海軍のトップシークレットな案件に横入りしようってとこで……危険だし、マルーを巻き込みたくないんだ」
それを聞いて、マルーは辺りをキョロキョロと見回した。少し離れた場所で部下が数人歩き回っている。近くの部屋には上官もいる。
このままここで話し続けるわけにはいかない。
『あ~~……ロシナンテ、後で掛け直す。そっちの番号教えてくれ』
マルーはそれから適当に理由をつけて基地を抜け出し、一旦近くの街に出た。
目についた飲食店に入り、店の人から電伝虫を借りる。ここなら盗聴される危険もなさそうだ。
近くに非番の海兵が紛れていないかを気にしつつロシナンテの番号に掛けた。
〈…………〉
『ロシナンテ? 私だ、待たせてすまない』
〈マルーか。場所を変えたのか?〉
受話器からロシナンテの声が返ってくる。
『ああ。聞かれたらマズイ話っぽかったからな』
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