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【OP】さよなら、My Dear

第6章 麦わらとハート


きっと電話の向こうで頭も下げているんだろう。こちらまで申し訳なくなってきた。
『私は、Tボーン大佐に私のことを思い出していただけただけでも十分嬉しいですから……!』
必死にそう伝えていると、横からさっきの准将がコソッと耳打ちしてきた。
「Tボーンさんは少将になりましたよ」
『ええッ、本当ですか!? Tボーン大佐、昇格おめでとうございます!』
「大佐じゃないですって……」
自分の居なかった間にみんな昇格している。8年も空いたのだから当然と言えば当然だ。
「頂上戦争でたくさん減った分繰り上がっただけですけどね。皆そうです」
〈マルー中佐……時の流れは残酷だ。ドレスローザで何があったか詳細は知らないが、ドフラミンゴの政権が崩れるまで何年もずっと囚われていたんだろう……?! 辛かっただろう……悲しかっただろうな……!〉
Tボーンが掛けた労いの言葉を聞いて、マルーはふと気付く。
『(そうだ……私、今までずっと辛くて悲しくて……寂しくて虚しくて悔しくて苦しくて腹立たしくて憎たらしくて恨めしくて………何より、それを誰にも言えないことが何よりも一番嫌だったんだ)』
オモチャだった頃はもちろん、解放されてからも息つく暇もなくずっと大変だった。まだ誰にも最悪だった感情を打ち明けられていない。
辛かったという事実をただ誰かに聞いてほしい。
『はい……Tボーン少将、私、本当にずっと……』
言おうとすると、歯が震え涙がボタボタと落ちてきた。
『つ……ヴッ……辛かっだです……! すっごくすっごく嫌でじた……! ドレスローザに着いだ次の日に本部に連絡じだんですけどォ……! 電話番に「お前なんて知らない」って言われで……誰も私のこと思い出してくれなぐで……!』
嗚咽が止まらないまま話す。涙と鼻水を見かねて准将がタオルをマルーに手渡した。
『自由の利かないオモチャにされて……望まない労働をさせられ続げで……ぞの間ずっと、ずっど「ヘキサポッド・マルー」がこの世の全でがら忘れ去られだまま誰からも認識されないのが死ぬほど悲じぐで、悔じぐで仕方がながっだです……!!』
拭いても拭いても流れてくる涙で目も声もグズグズだった。それでも、電話の向こうのTボーンはただ静かにうんうんと頷いて聞いてくれていた。
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