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【OP】さよなら、My Dear

第3章 ドジっ子


「上官といえば、マルーの上官も代わるんだっけ?」
『うん。Tボーン大佐になる』
マルーはもう既に会ったが、顔が恐いところ以外はとても良さそうな人だった。
「おつるさんのとこじゃないんだな」
『関係ないだろ。……まあTボーン大佐は優しそうだし勤務地も本部のままだ。お前と私が会える機会は減るだろうが、お互い改めて頑張っていこう』
「おう、よろしくな」
握手の代わりに2人はコップをカツン、と触れ合わせた。
『どうせなら飲み干すとしよう』
「ヤケクソか。いいぜ」
全然減らない中身を煩わしく思ったマルーの提案をロシナンテが承諾すると同時に、2人ともワインを煽った。
「…………ぐ、ハァ……ッ。すげぇキッツいな、コレ……」
『ヴォエエ!!』
何とか飲み下したロシナンテとマルーがタンニンの刺激に悶絶しながらコップを八つ当たりのような力強さでテーブルに置く。
それから目に涙をうっすら浮かべつつ、お互いやりきったとばかりに歯を見せて笑った。
『不味いな! 私たちにはまだ早かったみたいだ』
「成人したらまた飲もう。今度はもっといい酒でな」
『ああ、約束だぞ』
一頻り笑い合った後、段々と顔が赤くなってきたマルーが真面目な表情になりながら話し掛ける。
『もう1つ約束をしてくれ。……死ぬなよ、ロシナンテ』
この世にはたくさんの危険がある。海賊はもちろん、海難事故だって病気だってテロだって普通にある。
死ぬ原因なんてそこらじゅうに存在している。
これ以上気に掛けた人間が死ぬのは御免だと、マルーの充血し始めた目は訴えかけていた。
明日この2人のどちらかが死んでしまっても何もおかしくない世の中だ。
「死なないのは無茶だ。でも気持ちはありがたいぜ」
『無茶じゃない。死ぬなったら死ぬな。死んでも生き返れ』
言いながらマルーは泣き出してしまった。
すっかり酔っているのを察して、ロシナンテは水を汲みに行こうと立ち上がる。しかしマルーが腰にしがみついてきた。
『行くなァ! お前も私を置いていくのか?!』
「水取りに行くだけだって。すぐに戻ってくるから」
『ううッ……私も一緒に行くゥ……』
「酔ってんの誰かに見られたらマズイだろ」
宥めてから何とか水を汲んで戻ってくると、マルーは静かになっていたが代わりに床で大の字になって微睡んでいた。
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