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【OP】さよなら、My Dear

第3章 ドジっ子


新兵になってから数年が経過した頃、ロシナンテとマルーは将校にまで昇格していた。
「おめでとう、マルー!」
『ロシナンテもおめでとう!』
同じようなタイミングで少尉になった2人は少ない休日を使って互いを祝い合うことにした。
『スーツにまだ慣れないな。それにコートが重くてあんまり好きじゃない』
「あ、やっぱマルーもそうか。おれもあんま堅苦しい格好したくないんだよなー。あとは部下とかへの対応も大変だ。指揮執るのなかなか上手く行かないもんだな」
『すっごくわかる……人に指示するの得意じゃないから隊動かすの苦手だ』
「上官と下官との板挟みとかもあるって聞くし、こっからどんどんキツくなってくの覚悟しとかなきゃいけないな」
さっそく将校になりたてで出てきた不満を口にしていく2人。
『食堂の厨房から少し酒をくすねてきた。調理用のワインだから美味いかどうか知らんが一緒に飲もう』
「いいじゃねェか! サンキューな」
小瓶に移して持ってきた赤ワインをコップに注ぐと、ささやかに乾杯をする。
すぐに一口飲んだそれは渋くて、2人して苦々しい顔になってしまった。
『ありえんな。誰だこんなもん持ってきたのは』
「お前だろ! てかワインってこんな渋いのか? それとも調理用だからか?」
『比較するワインがないのが残念だな。今から上官の部屋にでも忍び込むべきか』
一丁前にワインを照明にあてて赤色を見るが、ただの苦酸っぱい液体であることには変わりなかった。
「昇級したてで問題起こすのはマズイだろ……。まあ本物の味はそのうち知れるさ」
言いながらロシナンテはまたワインを少し口に含むと渋味に耐えるような顔のしかめ方をした。
『やっと将校になれたが……同輩はすっかり少なくなってしまったな』
「ああ。生き残ってるだけで十分偉いって感じだ。それに不足した上官の補充ってとこもあるだろうし、昇級は実力だけじゃないってのが少し寂しいところだな」
数年でたくさんの海兵が殉職していった。海賊がひしめく大海賊時代なのもあって本部だけでも毎日のように人死にの報せがある。
お世話になった上官、たまに会話したりする同僚、名前すら知らない雑兵。誰が死のうと悲しいが、情勢的に仕方ないと諦めている気持ちも常にあった。
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