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【OP】さよなら、My Dear

第6章 麦わらとハート


海軍本部へ向かう護衛艦の中、することもないのでマルーは船内を歩いて回っていた。
センゴクやおつる、藤虎などの上官は別の船に乗っているようで、少し気楽な雰囲気が漂っている。
通路を歩いていると、見覚えのある海兵を見つけた。鳥カゴの中を子供とセットで抱えて運んだ男だ。
タバコを吸おうと箱から出している最中らしい。マルーは男の持つその箱にも見覚えがあった。
ロシナンテがよく吸っていた銘柄だ。自分のは随分前に小人に盗まれてしまったんだっけ……。
『また会ったな。1本もらえるか?』
話し掛けてみると、男もマルーのことを覚えていたようで驚いた顔をする。
「君も海兵だったのか……!」
彼は一等兵のため本来将校であるマルーに対して丁寧な言葉を使うべきだったが、予備の海兵のセーラー服に着替えているマルーを同じ下っ端海兵だと思ったらしい。
マルーも説明が面倒だったので特に言わないことにした。
『あのときの子供はちゃんと無事に母親のところへ帰せたか?』
「もちろんだ。君の能力には助けられたよ……子供はちょっと怖がってたけどな」
『そうだな……。まあ役に立てたのならそれでいい』
タバコのはみ出た箱を向けられ、マルーがそこから1本引き抜く。
続けて男がライターに火を着けた。
「ほら、火もだ」
タバコの先に近付けられたそれをマルーはサッと避ける。
『いや結構だ。煙たいのは嫌いなんでな』
「??」
『じゃあな、タバコありがとう』
手を振って別の部屋に移動し、硬めのソファに腰を据えた。
貰ったタバコを眺め、かつてロシナンテと2人で過ごした日のことを思い返す。
今でもタバコは臭くて苦くて嫌いだが……ロシナンテが吸っている時のタバコはあんまり嫌いじゃなかった。
『…………』
紫煙をフーッと吐きながら、物憂げに頬杖を突く横顔を今でも鮮明に思い出せる。そこから肩や髪に燃え移ってしまったときの異臭すらまだ記憶に残っていた。
こんなにはっきりと思い浮かべられるのに、もう2度と会えないだなんて……。
帰ったら墓参りに行こう。頂上戦争で海軍本部が壊れて別の場所に移動したらしいから、墓地も変わっているはずだ。
また後日センゴク大目付に聞いてみるか。
マルーがそんなことを考えながら過ごしていると、誰かが部屋に入ってきた。
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