第6章 麦わらとハート
後を付いて走れば自分も港へ辿り着けるはずだ。
マルーがすかさずローを追いかけようと駆け出したところ、目の前に大きな人影がヌッと現れた。
『ぎゃッ……ご、ゴリラ!?』
さっきローとセンゴクと一緒にいた毛むくじゃらの大きなゴリラにぶつかったみたいだ。
弾き飛ばされて倒れたマルーを見下ろすゴリラとその後ろにもう1人、センゴクが立っていた。
『……あ、せッ、センゴク元帥……!!』
マルーは急いで立ち上がって敬礼をした。身に染みついた反射の動作だったが、海軍の制服を着ているでもない自分は完全に一般人と同じ見た目だ。
一目で正体を分かってくれるはずもなく、そして今はそんなことをしている状況ではないとも思いつつ、それでもつい昔の習慣でやってしまった。
敬礼をしたまま見上げて動けずにいると、見下ろしていたセンゴクは小さく笑いながらマルーに近寄った。
「私はもう元帥ではない。……そう言えば、以前も1つ前の階級で呼んでくれたな、マルー中佐」
『…………!』
――覚えていてくれた!
マルーはそれだけでもう胸がいっぱいになったような心地になり、無意識に涙を目に溜めてしまう。
『はッ、その節は大変失礼致しました!』
そういや以前も目の前で泣いてしまったな、とマルーは思い出す。
「いやいや、気にしてはいない。今の役職は大目付だ……中佐もドレスローザにいたんだな」
『はい……長年海軍を抜けたままにしてしまい申し訳ありません。敵の能力のせいで帰還できず……私が未熟なばかりに……』
「いいんだ。お前以外の海兵も複数名囚われていたようだし、厄介な能力だったらしいな。まあ無事で何よりだ」
存在を忘れられるからドレスローザへ行ったきり戻ってこないことを疑問に思うことも、探そうとすることできない。
一体どれ程の海兵がホビホビの能力に苦しめられたんだろう。本当に厄介な能力だった。
「さあ、ここは危険だ……そろそろ海軍テントへ戻るとしよう」
『あッ、センゴクげ……お、大目付。私は東の港へ行こうと思ってまして……』
「空のガレキを見ろ。既に海兵たちは撤退していて、あそこには海賊しか居らん。わざわざ巻き込まれに行くこともないだろう」
遠目に、群れになって逃げていく海兵たちが見えた。