第6章 麦わらとハート
『麦わらたち……ロー……!』
麦わらの一味とトラファルガー・ローには世話になった。せっかくドレスローザをドンキホーテファミリーという悪から解放したのに、それらと同じく捕まって護送されては報われないだろう。
どうやら海賊たちの船は東の港に停泊してあるらしい。いくつかの隊は東の港へ向かっていった。
王宮の方へ行っても既に海賊たちのほとんどは海軍の動きを察知して移動を始めているだろう。彼らの向かう先は最終的に東の港だ。王宮ではなく港に行った方が確実に思える。
居ても立ってもいられず、マルーは東の方へ走った。
何の役にも立てないかもしれないけれど、黙ってやり過ごすのは性に合わない。海賊の味方でもないし海兵の風上にも置けないだろうが、今はとにかく東に向かわなきゃ気が済まなかった。
一気に騒がしくなったドレスローザを走っていく。
中心街から外れた先は建築物などの全てが壊れていて、悪路を極めている。見晴らしもそんなに良くない。
街から聞こえる叫び声や爆音を聞きながら、マルーは東の町カルタの辺りに辿り着いた。
『えっと……港ってどっちだっけ……!?』
少し走り疲れたマルーが息を切らしながら立ち止まった。
景色が様変わりしてしまっているせいで目印らしい目印がない。
港なら大きな階段を目指せばいいはずだが、崩れた建築物たちに遮られて位置がよくわからなかった。
この辺りは妙に静かだ。海兵も海賊もあまり見当たらない。
もしかして見当違いな方向へ進んでしまったんだろうか?
焦りながら見回していると、近くで誰かの会話が聞こえてきた。
『(人だ……道を聞こう)』
声を頼りに探してみると、そこには見覚えのある男が2人いる。
トラファルガー・ローとセンゴクと……なぜかゴリラが瓦礫の中やり取りをしているようだ。
『(センゴク元帥、髪が真っ白になってる! いやそんなことより、何故ローと2人きりで会話を……?)』
海賊と海兵が敵対するでもなく向き合っている姿を見たマルーは2人の前に出ていく気になれず、物陰から様子を窺った。
「――やはりか。ロシナンテが半年間任務から離れたのはお前の為か……?」
「ああ……病院を連れ回された」
センゴクの問いかけにローが答えている。ロシナンテ、と聞こえマルーは少し身を乗り出した。