第6章 麦わらとハート
麦わらのルフィがドフラミンゴを倒してからの2日間、マルーは救助活動と街の整備を手伝って過ごした。
家を失った国民たちと共に王宮に避難させてもらい仮眠を取りはしているが落ち着かなくて連日あまりよく眠れていない。
2日前の出来事があまりにも現実離れしていて、寝て起きたら全部夢になってしまうような気がして怖かった。
オモチャの奴隷じゃなくなったことやドフラミンゴが倒されたことが都合の良い儚い幻だったなら、今度こそ完全に心が折れてしまう。
『(大丈夫……これは夢じゃない。悪夢はもう終わった)』
そう何度も言い聞かせるよう心の内で唱えている。
マルーの抱えている蟠りはもう1つあった。
まだ海軍に自身の素性を明かす気にはなれず、表向きは有志の一般人として海軍テントの周りをウロチョロしている。
『(顔見知りの人間がロクに居ない……撤退する前に必ず声を掛けなきゃダメなんだけど、でも……)』
海軍大将ですら知らない奴に代替わりしてしまっていた。藤虎だかイッショウだかいう名前らしいが、そんな奴はマルーがまだ海軍にいた8年前には在籍していなかったはずだ。
8年以内に大将格まで昇りつめるなんてどういう経緯だろう?
無理に名乗り出て、知らない海兵たちに囲まれて尋問を受けることにはなりたくない。マルーは何とか事情を汲んでくれそうな海兵を見つけるまで機を窺っていた。
3日目の今日、海軍本部からセンゴクとおつるがドフラミンゴの護送援護のためにドレスローザに到着したという情報を小耳に挟んだ。
『(センゴク元帥なら私のこと知ってる……! ロシナンテ繋がりで記憶に残ってるはず……!!)』
マルーはすぐにでもセンゴクと面会したかったが海軍テントの周りはセンゴクやおつるを囲むように海兵が大勢集まっており、とても会うどころではなかった。
「海軍全隊!!! 麦わらの一味ならびにトラファルガー・ロー……そして王宮に匿われた罪人たちを一網打尽にせよ!!」
しまいには大将の気が変わったのか、昨日までの2日間放っておいた海賊たちを取り締まろうとドレスローザの全海兵を動員して攻め始めた。