第6章 麦わらとハート
空気が割れてしまいそうなほどの人々の歓喜の雄叫びがドレスローザに響き渡る。
マルーも分かち合うようにルフィの勝利に微笑んで、そして大粒の涙をこぼした。
『う……ぐすっ……。……ロシナンテ』
やっと終わった。やっと叶った。
ドフラミンゴはもう終わりだ。
すっかり崩壊した街を見て、マルーは胸の空くような感覚を覚える。
ロシナンテ、お前が死んでから辛いことばっかりだった。
お前がもう生きてないって事実が悲しくて悲しくて、心に大きな穴が空いてしまったまま埋まらなかった。よくあることと受け入れるのがどうしてもできなかった。
空いた心を埋めるためにお前を殺した奴を殺してやろうと思ったけど、敵陣に1人で乗り込んで復讐も果たせずに何年も奴隷として過ごすはめになった。
自分の選んだ道の結末は情けなかったが、最後の最後に目的は果たされたんだ。
ロシナンテの仇は討たれた。ドンキホーテファミリーの支配も失われた。
これでようやく復讐心から解放される。10年近く共にした私憤と別れを告げられる。
ありがとう、麦わらの一味。ありがとう、ドレスローザに集まった強者たち。
マルーは崩れ果てた国を一望しながら涙を拭った。
復讐が終わったのなら、次はもう前に進むだけだ。これから忙しくなるだろう。
一頻り感極まった後は切り替えて目の前のことに集中するべきだ。
この場の多くが報われたとはいえ国が崩壊したことには変わりないのだから、怪我人を運んだり瓦礫に埋もれた人を助けたり避難場所に誘導したりしなければ……それから、海軍と合流もしたい。
オモチャの件に関係なく自分の存在が忘れられていたとしても、所属していた事実はなくなっていないはずだ。海軍から支給された子電伝虫だって手元にいるし、少なくともホラ吹きだと言われ追い払われることはないだろう。
頃合いを見て顔見知りの上官に近寄ってみよう。
直近のタスクを多少考えつつ、マルーは中心街の方へ向き直って歩き出した。