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【OP】さよなら、My Dear

第6章 麦わらとハート


「ヒィ……化け物?!」
男児が怖がるような声を上げた。アメーバ状の人間に驚いたのだろう。
『悪いか! 今のうちに逃げろ!!』
マルーが庇いながら言うも、子供は頭を抱えて踞った。背面にくまが描かれた趣味の悪いシャツを着ている。
『しょうがないな……おいッ、ちょっと我慢しろ』
マルーは地面から子供をアメーバで絡めて持ち上げた。
胴を得体の知れないものに掴まれた男児がパニックを起こして手足をバタバタさせ抵抗している。
『助けてやるから暴れるな!……それとお前、これは何のマネだ?』
目の前の海兵は大粒の涙を流しながら尚も軍刀を振り下ろそうと腕に力を込めている。
何故かその表情は恐怖と安堵が混ざったような複雑なものだった。
「あ、ありがとう……! おれ、操られて……!」
しゃくり上げながら悲痛な声を漏らす海兵の様子はとても嘘を言っているようには見えない。
おそらく本当に何者かによって体の自由を奪われているんだろう。
『はぁ!? オモチャでもないのに………クソな能力ばっかだなドンキホーテの奴ら!!』
マルーは能力で2人を両脇に抱え、中心街までの道を走る。しかし、すぐ後ろまで鳥カゴの糸が迫っていた。
大人と子供の重量がマルーの走行速度を確実に鈍らせている。
『ハァ……ハァ……』
背後が気になる。音からして鳥カゴの収縮する早さとマルーの進む速さはほぼ同じくらいだ。
走っていくうちに疲労でもっと遅くなってしまうだろう。
『(どうしよう……この2人をここで下ろしても逃げられなさそうだし……)』
2人を掴んだまま3人揃って鳥カゴの餌食になる可能性を考えると一か八か各自で走らせた方がいいんだろうけど、そうもいかない。
1人は身体を操られていて逃げたい方向に逃げられず、もう1人は泣いて座り込んで走ってくれなさそうだ。
やはり自分が追いつかれないように走り続けるしかない。
『(……でも、これ以上速く走れない……!)』
死なせたくない。私が走らなければ助かるはずの命が無駄になる。
マルーが体力の限界をジリジリ感じながら街の中心へ向かっていると、背後の鳥カゴが一瞬止まった気配がした。
『……!?』
突然、地面や建物を切断する音が途切れた。驚いてマルーが振り返って見ると、確かに鳥カゴの糸が静止している。
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