• テキストサイズ

【OP】さよなら、My Dear

第3章 ドジっ子


知り合って少しずつ話す機会が増えるうちに、ロシナンテに好感を持つようになったマルーは友だか弟だかのつもりで度々ちょっかいを掛けている。
マルーはロシナンテの人となりがわりと好きになっていた。
「ん」
夕食を乗せたトレーを適当な席に運んで向かい合わせに座ると、ロシナンテがさっそくパンを差し出してくる。
『どれがいい?』
「サラダで」
生野菜が苦手なマルーにとっては好都合だったが、パンの代わりがサラダで足りる気はしなかった。
『もっと食え。肉もやる』
「ええ? いいよ、おれレタス好きだし十分だって」
『お前はデカいんだから腹一杯にしろ。成長期なんだから』
ソースのかかった焼いた何かの肉を自分の皿からロシナンテの皿に移すマルーを、ロシナンテは必死に止めようと言い返す。
「成長期はお前も同じだろ?! そんなんだから背も体格も小さいまんま……グエッ!!」
言葉の途中でマルーはロシナンテの口の中にパンを捩じ込んだ。
慌てて口から出すロシナンテをやや睨むように見ながら自分のパンを乱暴に齧る。
『バカにしやがって。すぐに追い越してやるからな』
「おえッ……すまん、マルー」
『ふん、そのパン食わないなら寄越せ。もったいない』
ロシナンテの歯形と唾液が付いてしまったパンを奪うように取り上げて皿に戻した。
「怒らないでくれ。おれだってお前に腹一杯になってもらいたくて言ったんだ」
『心配するな。私は胃も小さいんだからな』
「意地悪言うなよ。悪かったって……!」
困った顔のロシナンテを見るとなんだかマルーの口角は自然と吊り上がった。身長のことを言われてムカついたが、もうどうでもよくなってしまった。
『私の方こそすまない。わざとお前が嫌がることをした』
「マルーが気にしてること言って悪かったけどよォ。パンは勘弁してくれよ、まったく……」
口内に残ったパンの気配を消そうとサラダを口に運びながらロシナンテが文句を言う。
お互いに謝り合って尚やったことを言ってくるのは珍しい。それくらいイヤだったんだろう。
喧嘩未満のじゃれ合いはたまにするくらいの間柄だが、嫌いな食べ物を無理やり口に入れたのはさすがにマズかったようだ。
/ 103ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp