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【OP】さよなら、My Dear

第3章 ドジっ子


そいつとは新兵時代に出会った。
『またドジったな?』
破れたセーラー姿の少年の名はロシナンテ。クシャッとした金髪と長身がよく目立つ、マルーの同期だ。
いつだか食堂でお互いの嫌いな食べ物を交換したのがきっかけで親しくなった。
年齢も同じなためか接しやすく、見かけるたびに声を掛け合っている。
「いやー、さっきそこでコケちまってさ」
『コケるだけでそこまで服を壊せるのはお前くらいだろうな。こんなんじゃ将校になったとき示しがつかないぞ』
ロシナンテが制服を汚したり破いたりと結構な頻度で台無しにするのは日常茶飯事だったが、だからこそマルーは心配だった。
肝心なときにまでドジって危機に陥っていては命がいくつあっても足りない。注意散漫だとただでさえ危険な戦場が更に危険になることは想像に容易いはずだ。
いくらドジなところ以外は腕が立つとはいえ、いつまでもこんな感じではやっていけやしないだろう。
「飯まだだろ? 一緒に行こうぜ」
『着替えてからだ。こっちも訓練で汗まみれだしシャワー浴びたい』
「じゃあ食堂前で待ち合わせってことで」
そう言って走り去っていく通路でも、ロシナンテは再びコケていた。



「ゲッ。またパンか」
合流し、食堂の献立を見てガッカリするロシナンテにマルーはクスリと笑う。
『どうせ食べるのは私だろ』
「でもよォ、パンのたびにおれの主食がなくなるんだぜ」
『文句言うなら自分で食いなよ』
悲しげなロシナンテに向けて意地悪を言うと、如何にも悔しそうに顔をしかめた。
『……交換するおかず、お前が好きなの選んでいいから元気出せ』
まだお互いの名前すらうろ覚えだった頃、マルーにとってのロシナンテはやけに身体の発育が良いだけの根暗っぽくて目付きの悪い鈍臭い奴でしかなかった。
センゴク大将が保護者をしていたらしいが、どうにも存在が頼りない。
大人しく真面目な印象はあるがものすごくドジだし、雑用時代から既にマルーの耳にもとんでもなくドジな奴がいると噂程度で入っていた。
先輩の海兵たちにはドジゆえか後ろ盾ゆえか可愛がられているみたいだった。
ロシナンテがとても表情豊かで人並みに感情があるだなんて微塵も想像していなかったマルーは別に仲良くなる気などさらさら無く、いつかの食堂で話し掛けたのもただの気まぐれでしかなかった。
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