第6章 麦わらとハート
気絶したのか……? マルーが息を飲んで見ていると、体に妙な感覚が走った。
『……!!』
視線がどんどん高くなっていく。手足が伸びていく。髪の毛が視界を覆う。
『あああ、ああ………!』
身体が戻った。マルーは全身を触って確認しながら人間の身体であることを確認した。
周囲のオモチャだった人間たちも元の姿を取り戻したようだ。
『(夢じゃ……ないんだよな……?!)』
歓声を上げる周りを確認するも、すぐに溢れ出した涙で見えなくなった。
『いけない。ウソップとロビンと小人たちが……!』
泣いている場合ではない。マルーは涙を拭いながら幹部塔に向かって走る。
「おのれ麦わらの一味!! トンタッタ!! ここからは出さねェぞー!!」
久し振りの2足歩行で人と人の隙間を縫うように全速力で近付いた。憤慨するトレーボルと、瀕死のウソップを運んでいる小人と、その前で庇うように立ち塞がるロビンが見える。
「お前らの狙いはSMILE工場! そんだよんねー!? ニコ・ロビン!!」
トレーボルが粘液をロビンに向かって飛ばす。
「"ベタベタチェ~~ン"!!!」
『させるか!!』
ロビンの前に躍り出て、上半身からアメーバを広げ盾のように構えた。
ベチャッと激しい音を立て粘液が貼り付く。衝撃を足で踏ん張って殺しながら背後を守る。
「あ、あなたは……?!」
『マルーだ。約束を果たしに来た!』
粘液が付いた部分を捨て去りながらトレーボルを警戒する。もう一撃が来そうだ。
「待てェ!!」
その時、地響きのような足音と共に大きな男が現れ小人たちからウソップを取り上げた。
「巨人族……!」
「わー! ウソランドー!!」
10m以上もある巨人族の男がウソップを手のひらに乗せ、労しげに見ている。どうやら危害を加える様子はなさそうだ。
「……こんなになってまでおれ達を! お前がいなけりゃおれ達は永遠にオモチャのまま奴隷にされていた」
感慨深そうに巨人族の男はウソップの両腕を掴み、その場の全員に見せるように掲げた。
「よく見ろ戦士達よォ!! この男こそ! おれ達の呪いを解いてくれた英雄! その名もキャプテン・ウソップだァ~~~!!!」
ビリビリと鼓膜に響くような大声でウソップを讃えた。