第6章 麦わらとハート
「おれは伝説のヒーローでもねェし! "ウソランド"なんて名前でもねェ! 泣く子も黙る"麦わらの一味"の「狙撃手」……名前は"ウソップ"!! 海賊だァ!!」
ウソップが声高にそう名乗った途端、周囲がザワついた。
『(海賊……?!)』
マルーも同様に驚く。知らなかったとはいえ取り締まる対象の海賊と共に過ごしてしまった。海兵としてあまり褒められたことではない。
〈何で……そんなこと言うのれすか……? 海賊だけど、でも……ヒーローなんれしょう?〉
「違うっつってんだろ! 海賊は海賊だ!! 何度も言わせるな、おれはお前らをダマしてたんだよ! それをいつまでも信じやがって……!」
泣き声のような小人の問いかけにもウソップは無慈悲な返答をする。
何の為に戻ってきたんだ? 小人たちを助ける為じゃないのか?
〈べへへ、お前わざわざウソを教えに来たのか!?〉
ウソップがパチンコを掲げるのが見えた。
「おれの名はウソップ!! よく覚えとけトンタッタ! もしおれが死んだ時はノーランドの横に銅像を建てろ!! 今からおれがお前らの"伝説のヒーロー"になってやる!!!」
引き絞るゴムの音がここまで聴こえてくるかのように思えるほど強くパチンコを構える。
「"必殺緑星" プラタナス"手裏剣"っ!!」
切り裂くような音がした直後、会話は途切れ争うような物音が続いた。
『(頑張れ……頑張れウソップ……!)』
粉塵で幹部塔の中がよく見えない。心の中で応援しながらも経過を待つ。
やがて静かになり幹部塔内の様子も明瞭になったとき、マルーは絶望した。
『あ、ああ……ウソップが……!』
ボロボロのウソップが粘液で拘束されていた。
口もダラリと開け、もはや抵抗する力もないようだ。
そこへシュガーが近寄り、何かを食べさせてそのまま突き倒した。
終わった。ウソップも小人たちも私たちももうダメだ……。
「ぎィやああああああ!!!」
「きゃあああ!!?」
落胆したのも束の間、いきなり耳をつんざくような2つの絶叫が聞こえマルーは大きく肩を震わせた。
見ると、ウソップもシュガーも揃って床に倒れている。
〈シュガ~~~~~!!〉
スピーカーからトレーボルの焦った声がする。