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【OP】さよなら、My Dear

第6章 麦わらとハート


もしこのまま奴が地下交易港の何もかもを見捨てて逃げたのなら確実に一生恨んでしまう。
〈どうせ全部ウソだろう。お前らまた騙されたんだな?〉
なら強者に挑んで死ねと無責任に言っているようなものだが、8年分の苦汁と辛酸がマルーを許せなくさせていた。
〈哀れだなァ……お前らがこんなに傷付いても助けに来ねェんだ。いざとなったら腰が引ける程度の男だ、希望など捨てろ!!〉
嘘でも「おれについて来い」なんて小人たちに言ってたときは嬉しかったのに。肝心なときに全てを投げ出して逃げていってしまった。
〈黙れ! ウソランドはウソなんかつかないれす!!〉
『(小人たち……ウソップはもう……)』
〈ぼくらに何があっても「必ず全てを救ってやる」と言ってくれたんれすからね! 約束したんれすからね! ヒーローがぼくらをダマす筈がない!!〉
ウソップは聞いているだろうか? 聞いてても聞いてなくても、普通の奴なら戻って来られやしないだろう。
〈これ以上ウソランドを侮辱したらただじゃおかないれすよ!!〉
一度逃げ出した場所にまた戻ってくるなんて相当勇気のある奴くらいしかできない。命を捨てに行くようなものだ。
〈おまいら……よく覚悟しておくれす! ウソランドが来たら……ピギャ!!〉
突然、啖呵が悲鳴に変わった。
〈べへへ、面白ェ! トンタッタの断末魔は……ピギャ〉
〈ピギャ!!〉
〈ピギャ!〉
潰れるような無数の甲高く短い音。トレーボルが笑いながら小人たちを踏みつけているようだ。
電伝虫のスピーカー越しに嫌な音と叫び声が延々漏れ聞こえてくる。
『(やめろ……やめてくれ……!)』
惨たらしい。堪えられない。小人たちが死んでしまう。
こんなことをしたってウソップは来ないだろうに……。
「いい加減にしろお前らァ~~~っ!!!」
突如怒号と共に誰かが現れた。聞き覚えのある声だ。
『う、ウソップ……?』
思わず幹部塔に目を向ける。船に上るための渡り板の上を登る最中だったから幹部塔の中がさっきよりよく分かる。
遠目に長い鼻とモサモサの後ろ髪が見えた。監視役の服もいつの間にか脱いだようだ。
「お前ら一体どこまでおれを信じるんだ!? マヌケな小人共め!! そいつらの言う通り全部ウソなのに!!」
本当に戻ってきた……が、何やら助けに来たとは思えないことを言っている。
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