第6章 麦わらとハート
荷物を抱えながらマルーが中央の幹部塔に意識を向ける。
ウソップとロビンの2人は先ほどトンタッタ族が奪った服を着て監視役に扮しているようだ。
視界の端で、一行が幹部塔に入っていくのを確認した。
『(………?)』
何故だろう。見かけないオモチャばかりな気がする。
マルーは周囲のオモチャたちを見てそんな違和感を覚えた。
『(こんなに一気に補充されたことなんて今まであったか……?)』
今日は妙なことばかりだ。
ドフラミンゴの辞任とその撤回、外海から来た能力者たちの人質を扱う取引、兵隊の人形主導による小人族の逆襲、初めて見る大量の新顔。
これらの物事に関連はあるんだろうか。1日のうちに色んなことが起こりすぎている。
奇妙な現象たちが揃って偶然にでも功を奏せばいいのだが、現実的に考えてそんな都合の良い展開には然う然うならないだろう。
でもせめて人間には戻りたい。
今のところ唯一の希望であるウソップたちが作戦を成功させるのを信じて待つほかないんだ。
人間の身体に戻れたらドンキホーテファミリーからドレスローザを取り戻す作戦に全力で荷担する。それがドフラミンゴを破滅に追いやれる最善策だから。
マルーは重たい積み荷に潰されないように踏ん張りながらその時を待った。
「んねーんねー!」
少し遠くからトレーボルの声がする。幹部塔から港に出てくるのは珍しい。近くにはロビンと思わしき監視役もいて、トレーボルを先導している。
おそらくシュガーを孤立させる作戦なのだろう。
上手くいっているようだ。相手が少女1人ならどうにかなるかもしれない。
〈トレーボル!! 戻ってきて! ワナだよ!!〉
幹部塔からアナウンスが掛かる。8年前マルーをオモチャに変えた小娘の声だった。
『(あれ以来姿を見ていなかったが……幼い子供の声のままだ。まさか成長していないのか?)』
シュガーがトレーボルに助けを求めている。幹部塔の外に誘導されたのが罠だとトレーボルに伝わってしまった。
ロビンは大丈夫だろうか……?
今いる場所からだとトレーボルの姿しか見えない。あの図体で飛ぶように移動している。
癇癪を起こしたように叫んでいるが、何が起きたんだろう。
途端、トレーボルが粘液を伸ばして近くにあるアヒルの船首を掴むと同時に船を引き上げ、その勢いのまま幹部塔の屋根に投げ込んだ。