第6章 麦わらとハート
「うわっ!!」
「!!?」
『うっ……!』
ロビンとウソップがその場に倒れる。先ほど撒かれた妙な煙幕を吸ったせいだろう。
『なんだこれは……!?』
動かなくなった2人をマルーが戸惑いながら揺するが、何の反応も示さない。
息はあるようだが、撒かれたのが劇物であればこれから呼吸困難になる可能性も十分あるはずだ。
『誰だ貴様ら!! 今すぐ解毒しろ!!!』
周囲からの数多の気配を察知したマルーが辺りを警戒しながら怒鳴る。
大きさは自分よりも一回り小さいくらいだろうか。先ほどの目にも止まらぬ速さを考えると対応しようがないと分かる。
でもせめて2人のことは守らなければ。置いて逃げ出すわけにはいかない。
『姿を見せろ! さもなくば………うわァッ?!!』
素早い何者かが襲いかかってきた。小さい人のような生き物が迫ってくるのを一瞬視界に捉えたが、到底反応できる速度ではなかった。
前にもこんなことがあったような……という既視感と共にマルーは抵抗もできないまま地面に倒れ伏す。
そこからはもう手も足も出なかった。糸のようなもので動きを封じられたマルーは、意識のないロビンとウソップ共々グリーンビットの地下に連れて行かれる。
幸いウソップもロビンもすぐに起きた。
襲ってきたはずの小人たちはマルーたちの拘束を解き、気前よく食事を振る舞う。ウソップが何やら口利きをしたらしい。
2人をウソランド、ロビランドと呼びながら小人のトンタッタ族たちはウソランダーズとのドレスローザ奪還を掲げて盛り上がり始める。
神輿にされたウソップは明らかに動揺していたが、嘘に嘘を重ねてトンタッタ族の言う"ヒーロー"の立場を固めてしまった。
「みんな、行くれすよ!! ぼくらのヒーロー、ウソランドと共に! 捕らわれた500人の仲間達を取り戻しに!!」
無数の小人たちが雄叫びを上げ、グリーンビットの地下からドレスローザまで向かう。
辿り着いた先にもまた沢山の小人が待機していた。それに加え、青髪の大きな男と兵隊の人形も居る。
小人も兵隊も皆ドフラミンゴが憎いようだ。ずっと前から奴に報いる準備を進めていたらしい。
ドフラミンゴによる国盗りと奴隷支配が生んだ宿怨はドレスローザのそこかしこに蠢いている。マルーもその一部だ。